2009年3月のリーマン後安値圏から、2020年3月のコロナ急落直前までをひとつの長期サイクルとして捉えるのが「アベノミクス相場」です。 政策レジーム(金融政策・財政政策・成長戦略)と、円安・企業収益の改善が重なり、 日本株は“構造変化を伴う長期上昇”を形成しました。
市場サイクル:アベノミクス相場
本サイクルの特徴は、「政策による期待形成」と「企業収益・需給の構造変化」が同時に進んだ点です。 日銀の異次元緩和、円安、海外投資家の資金流入、ガバナンス改革(ROE重視・自社株買い等)、 そして世界景気の波が、上昇局面と調整局面を繰り返しながらも、 中長期の上昇トレンドを支えました。
フェーズ構造
① 2009/03/11 – 2012/11/13回復初期(危機後の正常化)
- 世界危機後の景気回復局面でリスク資産が持ち直し
- 日本株も安値圏から反発するが、円高・デフレ圧力が残存
- 上昇の“土台づくり”の期間(トレンドはまだ不安定)
相場史では「崩壊後の回復初期」。 価格は戻りやすい一方で、構造の転換がまだ不十分なため、 上昇の継続性にはムラが出やすい局面です。
② 2012/11/14 – 2015/06/24アベノミクス上昇(政策レジームによる加速)
- 政権交代・政策転換(金融緩和期待)を起点にトレンドが加速
- 円安と企業業績の改善が指数上昇を牽引
- 海外投資家の資金流入が需給面の追い風に
「政策レジームの転換」によって、相場の説明変数が変わるフェーズです。 価格が上がるだけでなく、市場参加者の期待と行動様式が変わり、 上昇が“構造化”していきます。
③ 2015/06/25 – 2016/02/12中国ショック調整(外部要因によるリスクオフ)
- 中国景気不安・世界市場のリスクオフで調整が深まる
- 短期間でボラティリティが上昇し、リスク回避が優勢
- 「上昇の途切れ」か「押し目」かの判定が難しい局面
長期上昇サイクルの途中に入る“外部ショック型調整”。 サイクルが終わるのではなく、上昇構造の耐久力が試される局面です。
④ 2016/02/13 – 2018/10/02再上昇(構造の再強化)
- 調整後の切り返しから、再び上昇トレンドへ
- 企業収益の改善、株主還元強化、需給改善が追い風
- 指数主導の上昇が続きやすい局面
“調整を経て上昇構造が再確認される”フェーズです。 相場史的には、トレンドが再点火しやすく、上昇が持続しやすい局面として整理できます。
⑤ 2018/10/03 – 2020/03/19米中摩擦・コロナ前崩壊(先行き不透明化)
- 米中摩擦など、世界景気の減速懸念が継続的に上値を抑制
- リスクオンとリスクオフが交錯し、相場が不安定化
- 長期サイクル終盤の“弱体化”局面
トレンドが“維持”から“弱体化”へ移る局面。 価格は高値圏でも、内部の強さが落ち、ショックに対して脆くなります。 その後のコロナ急落で、次のサイクル(コロナ流動性相場)へ明確に切り替わります。
Market History DB での位置づけ
MHDE上では、本サイクルは「政策レジーム転換(異次元緩和)を核にした長期上昇」として分類されます。 特に②の“上昇加速”と、③の“外部ショック調整”、④の“再上昇”が揃っている点が、 他の長期上昇サイクルとの比較において有用です。
価格だけでなく、円相場・海外フロー・企業統治改革など、 構造変数が同時に動いたサイクルとして、現在相場の比較対象にも頻出します。
出典
- 日銀:金融政策の変遷(量的・質的金融緩和、マイナス金利、YCC等)
- 内閣府・首相官邸:アベノミクス関連政策の概要資料
- 米中摩擦・中国ショック等の主要イベント年表
